高校受験 数学の学習法

数学の特徴は「差がつきやすい」ことにある。
英語が合格の必要条件、言うなれば「できて当たり前の科目」だとすれば、数学は、得意にすれば圧倒的な差をつけられる代わりに、失敗すれば他の科目を総動員しても取り返せない点差になる可能性がある科目だ。

また、数学という科目には、解き方が分かったからといってそれが必ずしも「点になる」とは限らないという難しさがある。
計算ミスがあったり、問いの読み違え、読み落としで正解として求められているのとは別の数値を書いてしまったりすることがままある。
すべてにおいて最後まできちんと解ききらなければならないということを覚悟してほしい。

以下、中学3年間を見通して、時期ごとの数学の学習法を考えてみたい。

A. 中学1年生の学習法

中学校の数学のカリキュラムは、基本的に同系統の分野を学年ごとに積み重ねていく形式を取っている。
分かりやすい例では、「1次方程式(1年)」→「連立方程式(2年)」→「2次方程式(3年)」、「比例・反比例(1年)」→「1次関数(2年)」→「2次関数(3年)」といった感じである。

「1年生のうちにある分野の理解を浅いままにしておくと先々の学習にも響く」ということが言えるだろう。
基礎を大切にして、当たり前のことを当たり前にできる能力をつけよう。
これが中学1年生の数学において、最も意識すべきことである。

計算問題はきちんと段階を踏みながら縦に書き進めていく。
反比例の漸近線や円錐の展開図、立体の見取り図などを正しく丁寧に書く。
そういった基本動作を早いうちに身につけよう。ミスの防止につながるとともに、将来的には、最近増えてきた途中経過を書かせる学校の対策にもなる。

分数式、分数の方程式を自在に操れるようになろう。
「関数」も、「図形」も、最終的に答えを出すのに使うのは方程式である。それも入試問題のレベルになると、分数を用いた式になる場合が極めて多いのである。
次に意識してほしいのは、目の前の中間・期末テストにだけこだわるのではなく、先を見据えた「考える学習」をしよう、ということである。
そのためには応用問題を数多く解くことである。
例えば最初に習う「正負の数」には、計算だけではなく、絶対値などに関連する応用問題が含まれている。
それを解くことで、数直線や不等号に対する感覚が自然に身につき、それからは当たり前のこととして使えるようになる。

また、3学期に習う平面図形の作図は、「なぜそのような作図法ができるのか」という部分まで突き詰めて考えることで、図形というものが、ある規則、約束事の具象化であることに気がつくかもしれない。
数学的思考の第一歩である。

中学1年生の範囲で完全にマスターしておいてほしいのは「空間図形」である。
「多面体」や「図形の切り口」の問題は、公立中学では重く扱わないかもしれない。
しかし、高校受験、分けても国私立高の受験において、この分野はまさに花形なのである。
「三角形の性質」を始め、「平方根」、ましてや「三平方の定理」を習っていない時期ではあるが、それゆえかえって頭を使わなければならない問題が、一部のハイレベルな問題集には収録されている。
春休みの課題に取り上げてみるのもいいだろう。

B.中学2年生の学習法

中学2年生の1学期は、公立中では「単項式と多項式」「連立方程式」、早い学校で「1次関数」の途中までといったところだろうか。
中1の学習に難があった場合はこの時期にできるだけ手当てをしておきたい。ただ、その際中1の内容にまで戻る必要はない。
上記の分野をしっかりやることで、中1時の落し物は、ほぼカバーすることができるからだ。

さて、2学期である。
入試数学の出題分野を見ると、中2の後半に習う「関数」と「図形」が全出題の半分ないしはそれ以上を占めている。
そして学校の難易度が上がるほど、この2分野偏重の傾向は強まる。
また、3学期に学ぶ「確率」も入試の重要分野である。
「連立方程式」が終わって「1次関数」に入ったら、いよいよ受験勉強が始まったという意識をぜひ持ってほしい。

それに伴い、学習法も変える必要がある。それまでは教科書や教科書準拠の問題集を中心に勉強していた人でも、

などの問題集を併用し、公立高入試レベルの問題にチャレンジするようにしてほしい。

国私立難関高志望者なら、

などを使うのがいいだろう。

レベルの高い問題にチャレンジする場合は、ただ問題を解くだけではなく、解く過程を記したノートを作るべきである。
解ききれなかった問題の場合も、解答の丸写しではなく、自分の答案に自分で添削を加え、「ここでこれを思いつかなかったために先へ進めなかった」「この数値の意味を誤解したために正解を得られなかった」ことなどを、後々見ても分かる形で残しておくとよい。

C.中学3年生の学習

中学3年生の1学期、公立高志望者は原則学校の授業の進行に合わせて学習を進め(内申点も大切なので)、そこに上記のような問題集で学習に厚みを加えるようにしよう。
さらに1学期のうちに1,2年の復習用問題集を2~3冊仕上げてしまうのが理想だ。
週末などを利用してやれば意外に早く終わってしまう。
夏休みからは受験用の問題集を用意し、できる範囲からやっていくようにしよう。
入試問題のレベルを肌で感じることで2学期からの勉強はきっと変わってくるはずだ。

一方国私立高志望者は、早い時期から自学自習を取り入れ、先の範囲をマスターしていく必要がある。
公立中の授業は進みが遅いため、夏前に「2次方程式」が終わっていないということさえ起こり得るのだ。
2次方程式が使えなければ、「2次関数」も、「三平方の定理」「円」を始めとする図形の問題も解きようがない。
学校の進度には関係なく、夏前に「2次方程式」、そして夏休みの前半には「三平方の定理」を使いこなせるようにしなければならない。
それでようやく入試問題の演習に入っていけるのである。

この場合の教材は、きちんと解説のついた参考書を使おう。
『数学 自由自在』(受験研究社)『くわしい 中3数学』(文英堂)等のスタンダードな教材で基本を身につけ、あとは問題集で実力を高めるやり方のほうが効率的だろう。

解説のくわしい問題集としては、東京出版の『高校への数学・レベルアップ演習』『高校への数学・Highスタンダード演習』が使える。
一応の目安では、前者は中堅私立高向け、後者は上位校向けである。
毎年春のうちには発行されているので(バックナンバーの有無は書店による)、夏休みに備えて用意しておきたい。
「高校への数学」シリーズでは、『数式の演習』『図形の演習』(夏から秋にかけて発行)が分野別強化に役立つ。
最難関校志望者には『日々のハイレベル演習』(初夏に発行)があるが、これは文字通りの「ハイレベル」なので、覚悟して取り組んでほしい。

2学期はいよいよ学校でも「2次関数」「三平方の定理」「円」が登場してくる。
公立高志望者は、内申点対策と並行して、今やっている範囲を入試問題でも解けるレベルに高めることを意識しよう。
国私立高志望者の場合、それらの範囲はすでに自力でマスターしているはずなので、学校の授業は基礎の確認に充て、家庭では夏休みから続けている入試問題集に全力で取り組むようにしたい。
加えて学校が休みの日には、過去問の演習を進めていかなければならない。
週ごと、月ごとのスケジュールをしっかり立て、強い意志で実行していくことが求められる。

これは数学に限ったことではないが、極端な言い方をすれば、中3の2学期はどんなに無理をしても構わないのである。
少々寝る時間を削るなど当たり前のことである。
中学入試と違い、15歳なら体力もかなりついているはずだ。頑張れるところまで頑張って、いよいよ疲れが溜まってきたと感じたら今度は思い切って休むようにしよう。
入試戦略上休むこともまた戦いなのだ。
要はメリハリをしっかりつけることだ。

もう一つ、学校の先生との進路面談は、内申点だけでなく2学期の模試の結果をもとに行われることを忘れてはいけない。
ここである程度の結果を残しておかないと、先生(基本的には安全策をとる方がほとんど)に押し切られて、不本意な受験パターンになる場合も出てくるのである。

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