高校受験 国語の学習法

国語は元々の素質に左右されやすい科目で、努力では計れない部分が多いと言われる。
それは一面真実であるが、決してすべてを語っているわけではない。国私立高の入試で80~90点も取ろうというのなら並み外れた素質も必要だが、合格ラインの60点台をめざすという観点に立てば、努力で十分カバーできる科目なのである。

以下、出題形式のタイプごとに国語の学習法を考えてみたい。よく用いられる「論説文」「小説文」…という区分けはあまり意味がないので避けるが、「古文・漢文」だけは特別な対策が必要なので独立させてある。

A.漢字・知識・文法の学習法

漢字の学習は日々の積み重ねである。といって多くの時間を割く必要はない。
毎日の習慣として決まった時間に少しずつやっていくのが理想だ。
例えば、朝、学校に行く前の時間などを利用して1日に10分程度、問題数でいえば20問程度をこなしていくのがいいだろう。
ただし、その際は必ず「書く」こと。間違えた字は「書いて覚える」こと。時間がなければ量を減らしても構わないので、この2つは必ず守ってほしい。
「書く」という「間」の中で、「この漢字は○○と△△と□□の組み合わせでできている」というような理解が生まれ、記憶にも残りやすくなるからである。

使う教材は『高校入試でる順漢字問題の征服』(旺文社)がお勧めだが、漢字が苦手な場合は『ニューコース問題集中学国語 漢字・語句』(学研プラス)などでもよい。
学校の定期テスト前には内容を教科書や学校指定教材の漢字に切り替えてもいいだろう。

知識問題には「四字熟語・三字熟語」、「ことわざ・慣用句・故事成語」、「同意語・反意語」「敬語」「文学史」などがある。
全てにおいて完璧な対策など、打つ時間も必要性もないので、まず志望校の過去問を調べ、出やすい範囲をしぼって勉強するのがいいだろう。

文法については、たとえ単独の問題としては出なくても、古典文法理解の基礎になるとともに、現代文でも、文の構造を意識しながらくわしく読むとき、正しい日本語で記述をするときなどに役立つため、ぜひ強くなっておきたい。
といって、多くの時間を割くことはできない。覚える範囲は教科書に載っているだけで十分なのだから、平素の学習の中で身につけておくのが実は一番効率的な方法なのである。
ただ、学校や先生によっては文法の扱いが軽くなってしまう場合もある。
その場合は『くわしい国文法』(文英堂)と付属の問題集などを利用して自学自習しておこう。

B.記号選択・抜き出し問題の学習法

ごく一部の学校の問題を除き、国語の中でもっとも配点の高いのは記号選択式の問題である。
ただ記号を選ぶだけだから簡単、なのではなく、外すと0点になってしまう厳しい出題形式なのだと考えてほしい。
この点については抜き出し問題も同様である。

記号選択問題の内容は、「語句補充」「傍線部解釈(言い換え、説明)」「理由」「脱文挿入」「内容吟味(正誤判定)」「要旨」等多岐にわたる。
いきなり選択肢に向かったり、抜き出し部分を探し始めたりするのではなく、次のような手順を踏まなければならない。

問いをよく読む

問いの文を漫然と読んではいけない。
「問いの中心は何か」「正解の条件は何か」ということをよく考え、出題者の意図を正確に理解しなければならない。

傍線や空欄の前後をよく読む

傍線部や空欄と関わりを持つ箇所を発見し、その内容を「根拠」として活用しなければならない。
「理由・背景」、「言い換え・要約」「対比」「並立」「例示」「反復」…このような関係で傍線部や空欄と関わる部分(それは1文であったり、連文であったり、あるいは段落全体であったりする)を精読し、正解に結びつく「根拠」をつかむようにしよう。
小説の場合は、心情理解に欠かせない「外的変化(事件・発見・投げかけられた言葉など)→内的変化(心情変化やそれを表す言動など)」の関係を整理して、そこをじっくり読むことから始めよう。

問いのポイントや選択の根拠はマークする

「根拠」となりそうな部分は必ずマークしておくようにしよう。
また、①で触れた「問いの中心」や「正解の条件」にも印をつけておき、解答欄に答えを書き込む前に確認する習慣をつけておくと、ミスを減らすことができる。
 
こうしたアプローチを確実に実行し、論理的な解き方ができるようになることが肝要だ。
それには論説文も小説もないのである。もちろん、「根拠」にあたるものが特になく、文学的素養がものをいう問題もないわけではない。
しかし、そういう問題は、できればプラスになるが、できなかったからといってマイナスになる問題ではないのである。
そう割り切って、とにかく論理で解いていける問題は絶対に落とさないという覚悟で臨んでほしい。

C.記述問題の学習法

記述問題は配点が大きいため、空けてしまうと大きな失点になる。
にもかかわらず記述問題に苦手意識を持つ受験生は多いようで、模試の答案を見ても空白のままになっている例が非常に多い。
しかし、2つの理由で、これは大変もったいない話なのである。
1つは、どの学校にも、記述の採点基準には部分点が設けられていること。
2つ目は、例えばある記述問題の配点が10点だとして、平均点が5点を超える場合はそう多くないことである。
採点ポイントが3つあるとして、そのうち1つが押さえられれば十分ということも起こり得る。
つまるところ、記述問題は完璧を求めず部分点を狙えということである。そのために必要なことをいくつか挙げておこう。

出題者が求めるものを見誤らない

問いの文は出題者のメッセージである。
それを読み違えてしまうと、見当外れの答案になってしまい、点が与えられない場合も出てくる。
「なぜ、どうして」は理由を答える。
「どういう、どんな」は言い換え説明が求められている。
そもそも説明=言い換えだ。傍線部の表現が具体的なら抽象的、一般的に言い換える、抽象的、比喩的なら具体的に言い換えるーそういったメッセージを正確に読み取るようにしよう。

最低限必要な語句は押さえる

気持ちを問う問題であれば、まず結びに置く「気持ち言葉」を決める。
この部分が正しければ、0点ということはまずない。
次にその気持ちになった理由を添える。これでもう半分はいく。
また、傍線部を具体的に説明するのであれば、傍線部内の語句1つ1つの横にその言い換えとなる言葉を書いてみる。
言い換えができた箇所に応じて部分点が与えられる。
このように積み立て型の思考で取れる限りの得点を狙うようにしよう。

「語句」から「文」に発展させよう

記述に使うべき語句が指定されている場合(公立高には多い)は、その語句を含む文に線を引き、そのつなぎ方を考えればよい。
たとえ語句の指定はなくても、問いの文や傍線部の周辺を読めば、解答文に必要な語句が分かる場合が多い。
その語句を突破口に、「この語句を使う」という発想から「その語句をふくむ文を使う」という発想に広げていくことで、ある程度まとまった内容を書くことができる。
  
国語の学習は数学と同じで「考え方」そのものを鍛えるべき科目である。
問題集を解いていて、合っていた、間違っていたというレベルで終わっていてはむしろ時間の無駄なのであって、仮に解けなくても、「なぜこういう答になるのか」を追究することが学習の眼目である。
その点では、解答解説をよく見て、これが丁寧で分かりやすいという問題集を使うべきだ。
ただ、記述問題の学習は、受験生一人ではなかなか難しい面もある。
添削指導できる者が傍にいて、何度も「やりとり」できる形が理想なので、もし記述問題が足を引っ張って合格が危うくなっている場合は家庭教師に頼るのが一番だろう。

D.古文・漢文の学習法

古文・漢文はもっとも対策の打ちやすい分野である。
定番の問題集ではあるが、夏休みに『高校入試でる順古典問題の征服』(旺文社)を一冊仕上げてしまおう。
知識事項を覚えることはもちろん、現代語訳との対照まできちんとやっておけば高いレベルでの基礎力が身につく。
あとは『全国高校入試問題正解』(旺文社)で経験値を積んでいけば、ほとんどの学校の問題に対応できるはずだ。

E.過去問の利用

以上問題のタイプごとに説明してきたが、国語の対策としてもっとも大切なのは、制限時間の中で長い文章を読み、それに対するさまざまなタイプの問題を解き切る実践的な演習、具体的に言えば過去問演習である。
国語は他の教科と違い、学校の進度、塾の進度に影響されにくい科目だけに、夏休みには過去問に取り組むようにしよう。

過去問としては、前述した『全国高校入試問題正解』(旺文社)と、声の教育社で出している学校別シリーズが代表的なものになる。
前者には全国の公立高入試問題と首都圏の有名国私立高、およびその他地域の代表的な国私立高の問題が収録されている。
これだけでもかなりの量になるが、中2のうちに前年度のものを用意しておくと、2年分の問題をストックでき、特定の科目を分厚く演習したいときなどに便利だ。
後者は各学校の入試問題を過去3~8年程度収録したもので、解答用紙もついているため、本番に近い状態で演習することができる。
基本的には前者を1冊と、後者を受験する学校の分だけそろえる形になるだろう。

国語に関しては、夏休みから9月にかけて前者を(公立高志望者は各都道府県の問題を、国私立高志望者は国私立の問題を)20校程度できれば上出来である。
10月頃には受験校も絞られてくるはずなので、後者はそこから始めよう。
ただ、学校との進学相談などで思わぬ状況の変化が起こる場合もある。
予定は早め早めに進行させておこう。

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