9月入学によるメリットとデメリット
新型コロナウイルスの影響により長い間休校したことで、学校も通常通りとはいかなくなりました。
そんな中、9月入学を導入しようという案が出ていることはご存じでしょうか?
もし、現状の4月入学から9月入学になった場合、どのようなメリットやデメリットが考えられるでしょうか?
ここでは、9月入学について考えてみましょう。
9月入学になったときのメリットは?
日本では、学校は4月に始まるものとなっています。
ほとんどの人は、それが当たり前だと思っているでしょう。
それなのに、なぜ9月入学にしようという案が出てきたのでしょうか?
実は、世界中を見回すと学校は、9月入学という国が多いのです。
アメリカやカナダが9月入学というのは聞いたことがある人も多いでしょうが、ヨーロッパでも9月入学の国が多く、中国や香港、台湾でも9月入学を採用しています。
それでも、日本では4月入学を続けていました。
これまでも、9月入学にしようという話はあったのですが、それほど重要視されていませんでした。
それが今回、新型コロナウイルスの影響で休校となったことで、注目を集めるようになったのです。
もし、9月入学が使用された場合、今回の休校で生じる問題のうち解決される点も多いでしょう。
9月から改めて新学年が始まるようになるので、教育内容が遅れたことや、各校でばらつきが出ているところがリセットされるのです。
この数か月で生じた遅れも、今年の学年が翌年の8月まで続くことで、5か月分の余裕ができます。
その間に、遅れを取り戻せばいいので、十分な余裕ができるでしょう。
また、現在は運動会などの学校行事も、中止されています。
授業の遅れを取り戻すためにも、延期ではなくこのまま中止となってしまう可能性が高いでしょう。
しかし、9月入学になれば、時間にも余裕ができます。
一度はあきらめた行事も、開催できるようになるのです。
学生にとって、生徒が一丸となって取り組む行事は何物にも代えられない思い出となるので、それが開催できるというのは大きなメリットになるでしょう。
中学受験でも、体調を整えやすい時期に受験ができるようになります。
現在は、冬の寒い時期に受験をしているのですが、それが春から夏前にかけて行われるようになるのです。
毎年、冬になるとインフルエンザなど、様々な感染症も流行します。
家庭でも、受験生の体調管理には気を遣うでしょう。
しかし、9月入学ならその負担も軽減されます。
留学生や、帰国子女の問題もあります。
海外の学校から日本へと来た時、入学時期の違いからスケジュールが立てづらい、という問題があります。
下手をしたら、日本に来た時に半年待ち、海外へと戻ったときにまた半年待つこともあり得るのです。
しかし、9月入学になった場合はそのずれもなくなります。
海外から、安心して留学できるようになるでしょう。
そうなると、日本もさらに国際化が進んでいきます。
9月入学が実現すると、このようなメリットが考えられるのです。
どんなデメリットが考えられる?
その一方で、9月入学が実現した場合は様々なデメリットも生じると考えられます。
そのデメリットとは、どのようなものでしょうか?
9月入学が及ぼす悪影響について、考えてみましょう。
もし9月入学になった場合は、幼稚園から小学校へと進む際に半年間のブランクが生じることになります。
そうなると、共働きの家庭では半年間、子どもを預かってくれる先を探す必要が出てくるでしょう。
子どもばかりではありません。
学校が9月スタートになったとしても、企業はあくまでも4月がスタートになります。
そのため、大学を卒業してから働くまで、やはり半年ずれてしまうことになります。
入学試験のスケジュールはもちろん、企業の入社試験のスケジュールもずれてしまいます。
そのせいで、何年かは確実に混乱が生じるでしょう。
学校だけではなく、社会全体に混乱が波及してしまう可能性があるのです。
生徒数の問題もあります。
9月入学になったとき、政府ではその年の新入生を、これまでの4月から翌年3月までではなく、該当する年の4月から翌年9月1日生まれまでに変更すると検討しています。
そうなった場合、対象となる子どもは1.5倍近くなるでしょう。
その時出てくるのが、教員不足の問題です。
特に、翌年からは例年通り1年分の子どもしか入学しないので、その年はよくても翌年から今度は教員が余ってしまいます。
試算によると、その年の教員は全国で28,000人程足りなくなるとされています。
その人数を、どう埋めるのかというのも課題となるでしょう。
また、今までより長く保育園や幼稚園に通うことになるので、現在でも問題となっている待機児童の人数も増えてしまうと思われるのです。
また、文部科学省では9月入学にするための費用について、試算しました。
その結果、家庭の負担額が大きく増えることが分かったのです。
ちなみに、全体での年間支出は6兆円増え、家庭がそのうち2.5兆円の費用を負担することになる、といわれています。
具体的には、9月入学へと移行する場合、公立小学校での負担が134,000円増え、中学校だと20万円以上の負担増になるといわれています。
最も負担が増える私立大学の場合は、60万円近く負担が増えると試算されているのです。
子ども一人に対して、これだけの負担が増えるのです。
子どもが2人、3人と複数いる家庭では、非常に重い負担額となってしまうでしょう。
そのため、9月入学には多くの国民が反対するのではないかと思われます。
このように、9月スタートにはデメリットも数多く考えられるのです。
もし、変更するなら多大な予算と制度の変更も伴うこととなり、多くの混乱が生じることになるでしょう。
それを押し切ってまで、今すぐ9月スタートにする必要性があるのでしょうか?
本当に9月入学はあり得るのか?
今後、9月入学になる可能性というのはあり得るのでしょうか?
現在検討されているのは、2021年度からの導入です。
しかし、実際に導入される可能性はかなり低いと言えるでしょう。
その理由として、まずはすでに学校に通っている子どもたちとの兼ね合いが難しい、という点です。
もし9月入学にした場合、今学校に通っている子どもたちは4月から8月までいったん休むことになります。
しかし、現在2か月から3ヵ月ほどの休校が続き、やっと問題なく学校に通えるようになったというのに、再び長期休みにするとなると保護者の仕事にも影響が出てしまいます。
そのフォローをするために、国から補助金などを支給する必要が出てくるでしょう。
何より、今は新型コロナがやっと収まりつつある状態で、すでに緊急事態宣言も解かれています。
その中で、国民が望んでいるのは今まで通りの平穏な生活になるべく早く戻ることです。
しかし、9月入学が導入されると、また多くの混乱が生じるようになります。
平常な生活を望んでいる国民が多い中で、わざわざそんな混乱を招くような真似はできないでしょう。
現在、ほとんどの学校で休校も明けて、遅れを取り戻すために頑張っています。
その状況を受けて、国でも9月入学に対しては消極的になりつつあります。
もし変更されるとしても、何年か時間をかけて段階的に進められていくのではないでしょうか。
まとめ
今回は、新型コロナウイルスにより休校が増えたことで提案されていた、9月入学に関してご説明しました。
多くの家庭でも、変更になったらどうするかと心配していたかと思います。
しかし、メリットとデメリットを考えると、早急に進む可能性は低いと思われるので、とりあえずこの先何年かは問題ないかと思われます。
まずは、授業の遅れを取り戻すことに集中しましょう。
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