役に立つ!時事問題解説③米中貿易問題(貿易摩擦)について

中学受験において、大きな得点源といわれている分野の1つに時事問題があります。
今回は、その中でも2019年に大きな話題となった、米中問題について詳しく解説していきます。
時事問題は受験直前でも点数が取れる分野です。
時間をかけずに得点できるようわかりやすく解説しますので、ここでしっかりとポイントを押さえておきましょう!

米中貿易問題とは

現在、米中貿易問題と呼ばれているのは、アメリカと中国との間に起きている貿易摩擦問題のことです。
貿易摩擦とは、国と国との間で行われる貿易において輸出と輸入が釣り合わなくなることから起きる経済的な問題です。
特定の国から特定の商品が大量に輸入されると、自分の国のその商品が売れなくなり、産業に悪影響を与えます。
特に、輸入額が輸出額を上回る「貿易赤字」の状態になると、国内に入ってくるお金よりも出ていくお金の方が大きくなる上に、海外製品が流通して自国の製品が売れなくなり、国内の経済全体にも大きな影響を与えることになってしまいます。
このような影響から自分の国の産業や経済を守るため、国と国との間の貿易では関税をかけることができます。
関税をかけると、その商品はもともとの値段にさらに関税分の金額を上乗せされて値段が上がってしまうので、輸入されても買う人が少なくなり、結果的に輸入量が減ることになります。
このように2国間で貿易をめぐって起きる問題を貿易摩擦と言います。

2018年以降アメリカと中国との間では、お互いの国からの輸入品に高い関税をかけ合う貿易摩擦の状態が続いており、この状態を、米中貿易摩擦米中貿易戦争、または米中問題とも呼ばれています。

米中貿易問題のきっかけ

2018年に表面化した米中問題にはいくつかのきっかけがありますが、特に大きなきっかけとなったのは、2016年のドナルド・トランプアメリカ大統領の誕生でした
不動産業を中心に有名な実業家だったトランプ大統領は、大統領選挙中から、アメリカの貿易赤字がアメリカ経済に悪影響を与えているとし、アメリカの貿易赤字を解消するために世界の国々に強い態度を取ることを選挙の公約にし、大統領選挙に当選します。
大統領になった初めの頃は、世界中のすべての国に対して強い態度を見せていたトランプ大統領でしたが、中国製の安い鉄鋼製品が大量に世界中で輸入されていることを問題として、2018年に中国から輸入される鉄鋼やアルミニウム製品に関税をかけました。
そしてこの後から、貿易赤字を解消するために強い態度を示して高い関税をかける相手が中国に限定されていきました。

しかし、米中の問題はトランプ大統領がすべての始まりではありません。
もともと世界第1位の経済大国であったアメリカでは、国家が主導して世界の経済競争を勝ち上がって世界第2位の経済大国になった中国に対して警戒心を持っていました。
さらにアメリカでは、中国がアメリカの企業の秘密を盗んだり、AIなどの重要な技術を莫大な金額をかけて手に入れたりしていると非難する声も多く聞かれるようになっていきます。
アメリカ国内におけるこうした中国に対する不満も、現在の米中貿易問題を後押ししているのです。

米中貿易問題の経緯

2018年3月にアメリカが中国から輸入される鉄鋼、アルミニウム製品に関税をかけたのをはじめとして、2018年7月にはさらに多くの輸入品に高い関税をかけることを発表しました。
中国はこれに強い反発を示し、アメリカから中国に輸入される多くの品目に報復関税をかけることを発表します。

こうした緊張状態の中、2018年12月にアルゼンチンで開かれたG20の場で、ようやく米中首脳会議が行われました
この時、貿易戦争の一時休戦の合意がなされ、アメリカと中国の間で貿易協議が開始されることとなり、米中の緊張状態緩和への期待が持たれました。

しかし、2019年5月にワシントンで行われていた貿易協議が事実上物別れに終わると、アメリカは即座にすでに発動済みだった2000憶ドル分の関税を10%から25%に引き上げることを発表し、再びアメリカと中国は貿易戦争へと突入していきます。
さらに、追加関税の発表の5日後にアメリカは、中国の通信機器最王手の「ファーウェイ」に対して安全保障上の脅威があるとして輸入の禁止を発表し、世界中で大きなニュースとなりました

こうしたアメリカの動きに中国も反発を示し、2019年6月にアメリカに対して発動済みであった600憶ドル分の報復関税を最大25%に引き上げることを発表します。
また、同じ時期にはレアアースの輸出管理を強化する方針も打ち出しました。

このように米中の貿易戦争が激化した2019年ですが、12月にアメリカと中国の貿易交渉が第1段階で合意し、アメリカが中国からの輸入品に上乗せしている関税の一部を引き下げるという発表がなされ、2020年1月に合意文書に署名する見通しとなりました。

ただ、今回の合意では、アメリカが問題だと指摘している多くの課題が先送りされた状態となっていて、今回の合意によってアメリカと中国の対立関係が緩和されるかどうかは不透明なままとなっています。

米中問題の影響

世界第1位の経済大国であるアメリカと、世界第2位の中国の間で起こっている米中問題は、当事者であるアメリカと中国だけではなく、日本をはじめとした多くの国に影響を与えています。

アメリカ側の影響

アメリカは、中国からの輸入品が減少したことにより2年ぶりに再開した工場があるなど、一部では好影響もあります。
また、悪影響を受けている一部農家などに補助金を出すなどの政策もあり、米中問題のマイナスよりプラスを強調しています。
しかし、2019年の雇用統計が予想外に悪化しており、米中貿易問題の悪影響が徐々に表れてきています。

中国側の影響

中国は米中貿易問題が表面化して以降続けて対米輸出額が激減していて、米中問題の影響はアメリカより深刻です。
しかし、中国は共産党が独裁政治を行っている国であり、政府の政策が国民の支持率に影響されないことや、国として情報を統制していることなどから、米中貿易問題がもたらす影響の詳細が表面化することがありません。
とはいえ、中国の実質GDP(国内総生産という、経済成長などを測る指標となるもの)は米中問題が表面化して以降一貫して低下を続けており、この状態が続くとさらに影響が出てくることは間違いないでしょう。

日本側の影響

日本の主な輸出先を見てみると、アメリカ、中国どちらもそれぞれ全体の約20%を占めていて、両国ともに日本にとって欠かすことのできない貿易相手国であることが分かります。
貿易相手国であるアメリカと中国の国内経済が悪化すると、日本にも大きな影響を与えます。
特に、日本の主要産業である自動車産業は、中国に生産拠点を置いている企業が多い上に、アメリカに対する輸出額が他の産業よりも多くなっているため、米中問題の影響が大きいと想定されています。

また、トランプ大統領が大統領就任当初、すべての国に対する貿易に強い態度で臨むことを表明していたことを考えると、今後、アメリカが日本からの輸入品にも関税を課すことも十分に考えられ、その場合の日本経済への影響は非常に大きなものになるでしょう

まとめ

貿易に関する米中問題は、2019年に大きな転機を迎え、今なお刻々と事態が変化しています。
また、米中問題は、アメリカと中国だけではなく、世界中の国の経済に影響を与える大きな問題でもあります
中学受験の時事問題では、特に多くの国々に影響があるテーマが出題されやすくなっているので、米中貿易問題が出題されることが十分に考えられます。
特に、アメリカや中国それぞれの地理や日本の貿易問題と関連付けての出題が予想されますから、関連のある分野も含めてポイントをしっかり押さえておきましょう。

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