中学受験で算数1科目入試が採用される背景にはどんなことが考えられるのか?

近年、中学受験において算数1科目入試を採用している中学校が増えていることをご存知の方もいるのではないでしょうか?
年々増えつつある算数1科目入試ですが、採用する中学校が増えているのはれっきとした理由があります。
今回はその背景について、解説していきます。

算数1科目入試とは

一昔前の中学受験といえば、4科目入試や2科目入試が当たり前でした。
しかし、最近では首都圏の中学校を中心に、算数1科目入試を採用する中学校が増加しつつあるのです。

算数1科目入試というのは、その名前の通り科目を算数だけにしている入学試験のことです。
他にも国語や英語など、別の科目1で1科目入試を採用している中学校もあります。
しかし、その中でも特に算数を採用している中学校が多いのです。

かねてから、算数は中学受験において非常に重視されている科目です。
ただ、算数1科目入試になると問題の傾向に変化がみられることが多いようです。
4科目受験の算数は主に計算力を試すものが多いのですが、算数1科目入試では、“考察力や論理的な思考ができるか”、といった点を測る試験問題を用意している中学が多いのです。

つまり、科目自体は算数ですが、その内容は総合的な力を測るものとなっています。
ただ公式を当てはめていくだけではなく、テストのときにじっくりと考えて回答を導き出す力がなければ、解くことができないのです。

算数1科目入試が本格的に採用されるようになったのは、ごく最近のことです。
今後、算数1科目入試を採用する中学校は、さらに増加していくと思われます。
中学受験を考えているお子さんは、特に算数の記述問題に力を入れていく必要があるでしょう。

なぜ、算数1科目入試が増えているのか?

しかし、これまでの4科目入試から算数1科目入試へと移行する中学が増えているのはなぜでしょうか?
その背景について、考えてみましょう。

まず挙げられるのが、”午後入試が広まってきたということ”です。
午後入試というのは、午前中に受験して、午後からはまた別の学校を受験することです。
首都圏では、近年この午後入試を行っている学校も増えているのです。

しかし、午前中と午後の2回入試を受けるというのは、受験者であるお子さんにとって大きな負担となります。
そのため、午後入試では受験の科目を減らすことで、負担を軽減して入試が受けやすくなるようにと考えていました。

算数1科目入試は、この需要にちょうど合致した方法だったのです。
併願で中学受験をする受験生は、受験勉強においてもそれぞれの学校を4科目全て対策するのではなく、1校の受験対策をした上でもう1校は算数だけ対策をしておけばいいので、勉強しやすくなるでしょう。

また、現代における“女性のキャリア意識”が変化したという点も、この受験が広まる要因となっています。
女の子の小学生を持つ親御さんが期待している進路として、理系への進学希望が増えているのです。

“リケジョ”という言葉も流行りましたが、人気のある女子校が学校としてそのリケジョを育てることに力を入れている、と表明するケースも増えています。
こうした学校は、算数1科目入試の採用にも積極的なケースが多いのです。

もともと、中学受験においては算数の成績が合否に大きく関わっています
多くの私立中学の入試結果を確認しても、算数は合格者と不合格者の点数差が大きいのです。

そこから考えると、科目を絞って入学試験を行うとしたら、採用されるのは自然と算数になるでしょう。
更にいえば、他の科目について考えてみた時に、算数で試験をする意味は明らかなのです。

国語に関しては、最近活字離れが進んでいると言われていることもあり、“できる子”と“できない子”の差が開いています
特に、男子の中でできない子が増えていて、女子に関しては大きな差がないといわれています。

国語については、文章を読み取る力が重要ではあるものの、明確な正解がない問題も多いので、対策が難しいという面もあります。
感性の問題である点も多いため、これだけで画一的に学力を試すには向いていないといえるでしょう。

社会に関しては、ほぼすべてが暗記問題です
暗記は、時間をかけさえすればできないことはないのですが、環境の違いによっても差ができてしまうため、暗記力を測る以外には向いていないでしょう。

理科については、本来実験や観測などが重視されるべき科目です
しかし、入試という場では、どうしても割合や比率などの計算問題や名称の暗記などが主となってしまうので、これも試験科目としては不適当です。

以上のことから、1科目を選ぶとなると算数が選ばれやすいのです。

選抜基準として算数を選ぶ理由

算数というと、計算能力を測ることが第一と思われます。
しかし、算数によって測れるものは、それだけではないのです。
何故、1科目入試において算数が選ばれやすいのか、その理由を解説します。

まず、算数には“明確な答え”があります。
自然数による答えがない場合でも、正解となる式がきちんと定まっているため、正解or不正解が明確となるのです。

学んでいる本人にとっても、自分がどれだけ正解したのかが分かりやすい科目はやる気になりやすいでしょう。
また、“一度理解してしまえば忘れにくい”というのも、算数の長所です。

算数は、四則計算のように単純な問題だけではありません。
記述問題では読解力が必要とされ、図形問題では想像力や空間認識能力が必要とされるのです。
そして、これらの能力というのは繰り返し練習することで、鍛えることができるのです。

算数における読解力というのは、問題文の中から正確に必要とされる条件を読み取り、それを基に計算しなさいというものです。
文章を読み慣れていないと、ミスディレクションに引っかかりやすく、数値を間違えることも多いでしょう。

また、図形問題を素早く理解するには、反復練習が必要です。
この図形からどう展開していくのか、この条件ではどうなるのか、試行錯誤していけば必ず解くことができる問題ですが、制限時間がある中で素早く解くには練習が必要です。

定番の虫食い算なども登場しますが、それもただ答えを出すだけではなく、理由まで解説しなくてはいけないケースがあります。
総当たりで計算していけば解けるような問題ですが、どうすれば素早く解けるのか、ということを論理的に解説しなくてはいけないのです。

このように、算数というのはその努力が結果に結びつきやすい科目なのです。
これまで何度も繰り返してきたからこそ、素早く解けるのです。
分かりやすい例としては、九九があります。

九九に慣れていない場合は、9×8は?と聞かれた時に、9×1が9、9×2が18、と順番になぞっていきます。
それに慣れることで、9×8は72、とすぐに答えが出せるようになります。
もっと慣れてくると、9×8と聞いただけで何も考えずに、頭の中に72という数字が思い浮かぶでしょう。

算数は、多くの要素を含んでいて、努力が分かりやすい科目なのです。
だからこそ、入学試験にふさわしい科目として多くの中学校が1科目受験算数を選んでいます。
世界的にも算数力というのは共通して必要とされるものなので、グローバルな視点からも今後算数はより重視されていくでしょう。

まとめ

中学受験において、併願者の事を考えて午後受験を行う中学も増えていることで、算数1科目受験を採用する中学校が増加しています。
算数には、他の科目に含まれる多くの要素が含まれていて、その上で算数にしかない要素も多いので、今後も重視されていくでしょう。
志望校で算数1科目受験を採用している場合は、どんな能力が必要かをしっかりと踏まえた上で勉強していきましょう。